2012年2月7日火曜日

■"朝ドラ"ゆえ? 『カーネーション』不倫描写に対する視聴者の反発


■"朝ドラ"ゆえ? 『カーネーション』不倫描写に対する視聴者の反発
http://news.infoseek.co.jp/article/cyzowoman_06Feb2012_18762
サイゾーウーマン(2012年2月6日08時00分)

 今回ツッコませていただくのは、大評判のNHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』。

 1月終盤の展開は、朝ドラでは珍しいほど好き嫌いのはっきり分かれる内容だった。恋を知らずに結婚・出産した糸子(尾野真千子)が父や夫、幼なじみを亡くし、ぽっかりと空いた心に入ってきた紳士服職人の周防龍一(綾野剛)。原爆の後遺症がある妻と子どもがいる周防に、自ら「好きでした」と告白する糸子。そそくさと去ろうとする腕を周防が素早くつかみ、抱きしめ、「おいも......好いとった」と告げる場面にトキメキを感じた女性視聴者は多かったはずだ。

 夫を大切に思うあたたかい気持ちとは別の、初めて知る恋のトキメキや切なさ。その思いの描き方だけでなく、巻き込まれる周囲がドン引きする様子、さらには自分から決着をつけず、あくまで相手に判断を預ける周防の男としてのずるさなどなど、どこまでもリアルな脚本・演出は、相変わらず見事だった。

 だが、絶賛する女性たちが多い一方で、恋を描いた件には強い反発・不快感の声もネット上で少なからず湧き起っていたよう。

 それは、単に「不倫」というものに対する道徳心だけではないように見受けられた。一つは、男勝りで気持ちの良いヒロインのメスの部分を見たくなかったということ。また、心理描写があまりにリアルであるだけに、生々しすぎて生理的な不快感が生まれてしまったということもあるのではないか。他人の色恋は実はそんなにステキに見えるものじゃなくて、それが本気であればあるほど、周囲から見ると生々しく不気味で不快感を覚えることが多いものだ。

 「ドラマのよう」「マンガのよう」で終わっていれば、「初めて知る恋の味」に視聴者も単にうっとりできたのかもしれないが、脚本・演出の上手さが仇になってしまった部分はあるのではないだろうか。
 さらに、朝8時という時間帯もあるだろう。深夜、少なくとも夜であれば、不快感を覚える人もそういなかったのではないか。

 そんな恋愛の週を終え、肩を落としている女性層と、ホッとしている層。正反対の両者の反応を見るにつけ、改めて感じるのは、『カーネーション』というドラマの引き付ける力の強さと、「朝ドラ」に対する視聴者の特別な感情であった。




■朝ドラの"お約束"を無視する『カーネーション』、リアリティーのある脚本が面白い
http://www.cyzowoman.com/2011/11/post_4581.html

 今回ツッコませていただくのは、10月3日から放送されているNHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』。

 コシノヒロコ・ジュンコ・ミチコという、コシノ3姉妹を育てあげた母の実話に基づくフィクションで、脚本を務めているのは、映画『ジョゼと虎と魚たち』や『天然コケッコー』、文化庁芸術祭大賞を受賞したNHK広島の単発ドラマ『火の魚』などを手掛けた渡辺あや。丁寧な脚本には定評があるが、連続ドラマ経験がない人だけに朝ドラという"長丁場"を不安視する声があったが......。

 まず朝ドラのお家芸(?)というべき、「何でもヒロインのおかげ」「何でもヒロインが解決」パターンがない。「頑張りすぎのヒロイン」は、頑張りすぎて倒れてしまうのが"お約束"だが、『カーネーション』においては、高熱で職場に向かうも、「おまえ一人いなくても何も困らん」「それより風邪をうつされるほうが困る」と"本当のこと"を言われ、職場から追い返され、悔し泣きする。

 もう一つのお約束「土下座」も登場するが、これまたパターンが大きく異なる。娘・糸子(尾野真千子)に洋裁を教えてほしいと、根岸良子(財前直見)に土下座する父・善作(小林薫)。それを慌てて制止する根岸先生に「今やろうとなさってるのは、まさか、あの土下座というもの......?」と聞かれると、ケロリと言い放つ。


「土下座くらいなんぼでもしますわ、商人は」

 全体的にはリアルなストーリー展開だが、部分的には「矛盾」を指摘する視聴者の声もある。たとえば、呉服店を営む頑固な父親が、洋裁を応援し始める展開には、「急に良い父親になってしまった」という落胆の声があったり、妹にお金のことを散々説いたヒロイン・糸子が、初仕事の相手からお金をもらわなかったことへの違和感を覚えているなど。

 だが、そのときどきの心の揺れや衝動的な感情、「ちょっといい気分になっている」心の動きなどによる矛盾があってこそ、リアリティーというもの。

 特に父親は、本当にときどき「単なる僻み根性」で娘にいけずをしてみたり、横暴を働いたり、ひどく打算的だったりする。でも、常に一貫性があって良識ある登場人物より、よほど人間らしくて魅力的ではないか。

 これは、実話をベースにしているから説得力があるという理由ももちろんあるだろうが、実話とフィクションとのバランスが実に上手い。

 放送開始から1カ月以上経過している現時点で、まだ1回も「タルい」「要らない」回がなく、王道ドラマゆえの大雑把さもなく、かといって近年のドラマに多い、「伏線」だらけの脚本家の得意気が前面に出ているドラマとも違う。

 ただひとつ惜しいのは、朝ドラの昔からの不思議――「毎日見たい顔ではない」などという声がけっこうあるように、ヒロインの器量の良し悪しのみで判断する層が多いこと。洋装でキリッときめたときの糸子は実に美しいので、その落差も含めて、楽しみたいものです。



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