2012年6月21日木曜日

■「消費税増税法案だけを急ぎ成立させようとする大政党の動きに“待った”ではなく称賛を贈る主要メディアの倒錯ぶり」


「消費税増税法案だけを急ぎ成立させようとする大政党の動きに“待った”ではなく称賛を贈る主要メディアの倒錯ぶり」
http://www.asyura2.com/12/senkyo131/msg/566.html

「全国紙の新聞社は、主要広告主であるグローバル企業の意向を汲んで消費税増税を強く求めていると思われる。

 そのような全国紙など新聞社が次に狙うのは、新聞への“軽減税率”の適用であろう。
 そうであれば、低所得者層への給付付き税額控除を政策とする民主党より、食品などへの軽減税率の適用を政策とする自民党に“親近感”を寄せるのは当然である。
 軽減税率は、消費税=付加価値税の内実から、消費者のためにあるのではなく、直接及び間接の効果で供給する事業者のためにある。」

と書いたところ、そのコメント欄で次のような情報をいただいた。

「11. 2012年6月18日 19:31:42 : gLYNZSkXQ6

新聞が提言税率の対象になるという約束になっているそうです。ラジオでどっかの新聞(○経新聞)の人が言っていました。したがって、各紙とも、消費税に肯定的になっているんですね。すべてやらせ!!恥かしくないのかな?日本のジャーナリストは、利権屋ですね。
新聞が低減税率の対象になるなら、何に消費税がかかるの?またここに、利権の温床が出てきます。」

http://www.asyura2.com/12/senkyo131/msg/566.html#c11


 勝手ながら、「提言税率」や「提言税率」は、軽減税率のことと理解させていただいた。


 「軽減税率」は、民主・自民の消費税税率アップ共同作戦のなかで自民党から出されたアイデアである。
 「軽減税率」は、付加価値税先駆者である欧州諸国でも採用されているが、税務処理の実態は定かではない。
 特定カテゴリーの商品に対する付加価値税税率が他の商品よりも低く適用されることはわかるが、最終的な徴税処理がどうなっているかが不明だからである。
(「軽減税率」を説明しているものをいくつか読んだが、適用される商品カテゴリーや税率で、税処理まで入り込んだ説明には行き着かなかった)

 gLYNZSkXQ6さんのコメントをきっかけに、消費税の理解を深める目的もかねて、「軽減税率」について少し考えてみた。


■ 「軽減税率」にインボイス方式は必要か?

 20年以上も前の消費税導入段階から言われていることだが、付加価値税の“不正”を防ぐためには、付加価値税の受け払いを明示するインボイスが必要だとされている。
 今回も、「軽減税率」案が浮かび上がってくるなかで、インボイス方式が再び俎上にのぼっている。

 結論的に言えば、「軽減税率」があろうが、「輸出戻し税」があろうが、徴税当局にとってインボイス方式は必要なものではない。

 インボイス方式は、徴税当局のためというより国民向けの付加価値税(輸出戻し税)正当化装置であり、徴税当局にとっての“効用”は、伝票保存付き帳簿方式となんら変わらないからである。

 売上と仕入をきちんと把握すればいいということでは、法人税の徴税と消費税の徴税はまったく変わらない。
 消費税の仮受や仮払という話は、税務処理上の虚構であり、実際の取引実態とは無関係だからである。

 消費税の“不正”を帳簿と伝票のチェックで防げないのなら、法人税の“不正”も防げないことになる。

 課税される事業者の会計処理は面倒になるが、徴税当局にとっては、申告制度の消費税で「軽減税率」が適用されて面倒になるとしても、税務調査のときに「軽減税率」が品目として正しく適用されているかどうかをチェックする手間だけである。


■ 新聞に「軽減税率」が適用されると新聞購読料は安くなるか?

 これは、食料品に「軽減税率」が適用されると食料品は安くなるのかという問いと基本的に同じである。

 消費税の税率が10%の段階で「軽減税率」は採用されず、15%といったもう一段高い税率になったときに採用されるようだが、「軽減税率」の適用云々だけでは、適用対象の商品の価格がどうなるか何とも言えない。

 「軽減税率」が実際に採用されるか、採用されるとしてもどのように適用されるかまったくわからないからである。

 新聞に「軽減税率」が適用されるときには、電子版新聞や書籍も「軽減税率」の適用対象になると予測する。

思考実験として、いくつかの場合について考える。


1)非課税的な「軽減税率」の適用

 現在でも、「軽減税率」の適用ではなく、非課税の適用を受ける取引はある。賃貸住宅や福祉関連商品そして金融取引である。

 消費税率のアップと同時で、新聞や食料品に「軽減税率」ゼロ%が適用され、消費税の申告処理が非課税と同じだとすれば、算術の範囲でも、新聞や食料品の価格は上昇する。

 というのは、新聞社も農家も、自給自足ではなく、様々なものを仕入れており、その多くが通常税率の適用を受けるからである。
 課税売上分は別だが、仕入がほとんどない新聞社でないかぎり、消費税で仕入控除を受けられない非課税措置はコストアップにつながる。
法人税も、売上から消費税分が控除できないため、課税強化になる。

 値上げに踏み切る新聞社幹部の代弁をすると、「社会的使命を帯び文化的意義も持つ新聞は、良識ある政府や国会のおかげで「軽減税率」の適用を受けることになりました。しかしながら、新聞用紙やインク代などの必要資材は消費税税率のアップで高くなります。また、日夜を分かたず取材活動に励む記者たちの消費税負担も増大することになります。つきましては、消費税の転嫁はまったくいたしませんが、かかるコストの上昇に見合うだけの購読料の引き上げをお願い申し上げます」というものだろう。

 この理屈は、農家や食品スーパーなども同じである。

 非課税的な軽減税率を適用されるとなったら、新聞社は、輪転機など設備投資を前倒しで行うはずだ。
 新聞が非課税として扱われるゼロ%税率になったら、これまで一括消費税分を控除できた設備投資が、新聞(たぶんそのときは書籍もゼロ%)以外の課税取引の比率に見合う金額しか控除できなくなるからである。

2) 免税的な「軽減税率」の適用

 この場合は、「輸出戻し税」と同じ恩恵が受けられることになる。
「軽減税率」がゼロ%なら、消費税をまったく(課税売上を除くほとんど)負担しないで、消費税還付金まで受け取ることになる。
 新聞社が輸出企業の仲間に入ったと考えればわかりやすいだろう。

 では、この場合に、新聞購読料は下がるのだろうか?私の判断では、この場合も、新聞購読料は上がるとみる。

 さすがに、謂われのない還付を受ける、新聞用紙やインク代などの必要資材が消費税税率のアップで高くなったというようなことは理由として持ち出さないだろうが、「日夜を分かたず取材活動に励む記者たちの消費税負担も増大します。つきましては、消費税の転嫁はまったくいたしませんが、かかる負担の増加に見合うだけの購読料の引き上げをお願いしたい」と言うだろう。

 「輸出戻し税」の実態が覆い隠されている現実を踏まえると、新聞社は、厚顔無恥で、「新聞用紙やインク代などの必要資材が消費税税率のアップで高くなる」という理由も持ち出すかもしれない。


3) 「軽減税率」5%の適用で、仕入控除は実態のまま

 新聞に「軽減税率」5%が適用され、消費税計算での仕入控除は、仕入れ取引ごとに適用される税率で算出するとする。

 納付すべき消費税は、「(新聞売上×5/105+一般売上×税率/(100+税率))-(一般仕入×税率/(100+税率)+軽減税率品仕入×5/105)」となる。

※ 軽減税率は、複数の税率も可能だが、煩雑なのですべて5%とした。食品・生理用品は3%、新聞書籍は5%などと分けることができる。

 売上に占める新聞(書籍)の比率が高く、仕入に占める一般商品の比率が高ければ、「消費税還付金」を受ける可能性が高い。

 この場合も、仕入れコストが上がることもあるが、消費税増税で同じレベルの生活に必要な生活費が増加することを盾に新聞購読料を上げるだろう。

■ まとめ

 以上のことから、新聞社が新聞の軽減税率適用を約束されているのなら、2)か3)の適用を受けるはずである。

 非課税業者となる1)は、ほとんどメリットがない、設備投資まで考えるとマイナスになる制度なので強く忌避するだろう。

 「軽減税率」が適用されるとしたら、2)か3)になるだろう。
 2)3)いずれであっても「消費税還付」を受けることになり、まだまだ価格支配力を維持している大手全国紙なら、収益性を高めることができるはずだ。

 もっと詰めて検討しなければならないテーマだと思っているが、消費税を考える一助になればと思い急ぎ投稿させてもらった。



0 件のコメント:

コメントを投稿